グループ別の歴史をご紹介。グループ3はテリア。
スポーツ猟犬の歴史を持つ農場犬
第3グループはテリア種のみで成りたちます。グループ2は農場のこまごまとしたお手伝いをする犬が集まっていると述べましたが、それならテリアも入れてよさそうですよね。グループ2に属しているのシュナウザーやピンシャーなどは、ドイツ版テリアと言われているほどです。何が違うのでしょうか?
テリアに属している犬種は害獣駆逐犬ではありますが、スポーツ猟犬として発達した歴史を持っています。それもラテン語の名が示すように地中(テラ、Terra)での猟です。アナグマとキツネ猟に使われました。一方、シュナウザーもピンシャーも害獣駆逐犬ではありましたが、ハンターによって専門的に猟犬として使われた歴史はありません。テリアといえば有名な「テリア気質(感情的で一気に爆発する性質)」がありますが、それも猟犬だからこそ培われました。
テリアの特徴として、もうひとつ大事なことがあります。これら地中猟犬は全てイギリスで発達しています。第3グループの中には、ジャーマン・ハンティング・テリアやチェスキーテリアのようにイギリス以外を原産国として持つ犬もいます。しかしそれとて、元はといえばイギリスのテリアをベースに犬種として確立させたものです。
一番ポピュラーなテリアは?
イギリスは原産国だけにあって、本当に国中がテリアに溢れています。特に多いのが、ジャックラッセルか、あるいはそのミックス。ジャックラッセルには、農場犬、猟犬という肩書きがありますが、そのほかに、乗馬お供犬としても知られています。厩舎でネズミ捕り犬として活躍していたために、馬に携わっている人々の目につきやすかったのでしょう。今日、ヨーロッパでは乗馬界のマスコット犬的存在でもあります。ちなみに、イギリスではテリアレースにおけるヒーローがやはりジャックラッセルテリアですね。テリアレースというのは、地面を走るルアー(疑似獲物)を追いかけさせてどの犬が一着にあるかを競う遊び。イギリスのカントリーフェア(農場関係や狩猟関係のフェア)では、欠かせない人気イベントのひとつでもあります。
日本で一番よく知られているテリアはジャックラッセルテリアもしかり、しかし昔からの定番といえば、ヨークシャーテリアですね。今はお座敷犬の代表犬種ですが、起源をたどれば、本来のテリアとして働いている時期がありました。今ではテリア犬種の多くが愛玩犬として飼われていますが、それでもヨーキーほど愛玩犬雰囲気が強い犬種はいません。その意味で、ヨーキーは特殊な例であるともいえるでしょう。原産国のイギリスではテリアではなく愛玩犬のグループにカテゴライズされているほどです。
矛盾のテリア
テリア種には、エアデール・テリアのような脚長の犬が存在します。ちょっと矛盾していますが、あんなに体高があれば、テラ(地中)に潜ることができません。これらはテリアに他の脚長犬種が掛け合わされ出来あがった犬種です。エアデールはハウンドとの、ベドリントンテリアは視覚ハウンド(ウィペットなど)のミックスから成り立っています。確かに地中には潜ってはいけませんが、いずれも地中猟犬として培われたテリア気質は残されています。