グループ別の歴史をご紹介。グループ9はコンパニオンドッグ&トイ・ドッグ。
「愛犬とディスクで遊ぼうと思ったから…」
「救助犬の訓練をして世の役に立ちたかったから…」
なーんていちいち理由づけは一切いりませんね。飼った動機は―単に可愛がりたかったから!
と正々堂々と言えてしまうのが小型愛玩犬です。
シェパードやボーダーコリーのような作業のお手伝いをしてきた犬ではありません。けれど歴史を通して「コンパニオンシップ」という人間の感情のニーズを満たすのに大事な役割を果たしてくれた犬たちです。これもある意味立派な「使役」です。
ヒトにひたすら愛でられること、撫でられることを仕事とし、それで、体はコンパクトに、愛情表現度は豊かで性格はとことん朗らな犬として作られました。小型愛玩犬は、膝犬、あるいは抱き犬ともいわれ、その歴史は意外に古く遥か紀元前に遡ります。
もっとも、愛玩犬を持てる時間と金銭の余裕があったのは、近代以前では階級のある人々であり、膝犬は洋の東西を問わず貴族や皇帝のペットとして進化を遂げてきました。古代ギリシアでは、マルチーズの祖先が膝犬として上流階級の社会に定着していたし、16世紀のヨーロッパでは、膝犬は貴婦人の間の流行でした。膝犬となったこれら小型犬たちは他の犬とは区別され、外に繋がれ風雨に曝されることもなく、それどころがベッドの中にすら連れ入れられました。時に縫いぐるみ、あるいは湯たんぽ代わりとして、人間の可愛がりたい欲に応えてきたのです。
面白いことに、現在、日本中の家庭にそのニッチを最も広範に広げている犬種が、実はこれら貴族の作った膝犬ブリードです。昔のように犬を労働力として必要しておらず、私達が犬を飼う動機って貴族と同じ、純粋なコンパニオンシップが欲しいから。かつ都市生活に適応できる小さなサイズなら尚いいわけで、この現代の要求に膝犬犬種が容姿、メンタリティと共に完璧にマッチしているわけです。
小型愛玩犬種に特徴なのは、大きな目に丸いペタンコ顔。フワフワしていたり、コロコロしていたり。短い四肢を懸命に動かすぶきっちょなしぐさ。成犬なのに仔犬のようです。こんな視覚刺激をあたられると、人間は本能深くにある「可愛がりたい反応(キュート・リスポンスとも言う)」が起こり、いてもたってもいられません。
「抱きしめたーい、可愛がりたーい!」
小型犬は、ノーマルサイズのイヌから生まれてくる突然変異の矮小のコが元になったと言われています。サイズが人為選択を受けたところで、小型犬独特の天使のようなあどけないマスクも、人の手によって一層の進化を遂げました。ブリーダーたちは人のキュート・リスポンスをもっと煽る様に、顔の可愛らしさに拍車をかけ、犬種改良を施しました。そして現在かわいいトイ系の犬種がたくさん現れたというわけです。