ミックス犬のおもしろさ-どんな犬種が背後に控えているのかな?その見方-⑤
ミックス犬のおもしろさ-どんな犬種が背後に控えているのかな?その見方-⑤
・文:藤田りか子
雑種はマルチプレーヤーで純血種は専門家
みかけだけではなく、行動はどう雑種に遺伝されるのでしょうか?
雑種と純血の行動における違い、というのはかなり大きいものです。雑種には、純血種のような特に秀でた「犬芸」というのがあまりありません。どちらかというと広く浅くオールラウンドに犬技をこなします。ここで言う犬技というのは、純血種の持つ独特の作業能力。ボーダーコリーの羊集め能力やポインターの鳥をみつけたら凍りつく能力、ブラッドハウンドの足跡追求力がその例です。
ある行動が欲しくて意図的にミックスをつくることもあります。これは血統書に関係のない実用度が決め手となる狩猟犬や作業犬の世界に多いものです。シベリアンハスキーにグレーハウンドの血を入れて走りの性能のいい橇犬が作られています。狩猟家の間でも意図的な異種交配は日常茶飯事。より良い獣猟犬を得ようと、ハウンド系と日本犬を掛けたりもします。ヨーロッパの狩猟家もスピッツ犬にドイツスパニエルを掛け、猪猟に適したイヌを作る。ただしこれら雑種はいずれもF1世代(=雑種一代)限り。その後、かけあわせても専門化した特徴はどんどん薄められてゆきます。次のが欲しければまた純血種同士をかけてミックスを作り直していかなければなりません。
「専門分化している犬種に別の血をいれれば、イヌはより平均的な動物、つまりもとのオオカミに近くなってゆきます」
とは、スウェーデンのイヌ学遺伝学者のL・スウェンソン博士の言葉。だからこそ、雑種には「これ!」という行動がなく、しかし「いぬらしい」行動形態はとどめているというわけです。