イギリス生まれの犬種とイギリス犬事情②
イギリス生まれの犬種とイギリス犬事情
・文:藤田りか子
人気の牧羊犬にガンドッグ達、そしてラーチャー
ジャーマン・シェパードを除けば、イギリスの人気犬というのは、ほとんど自国の犬種で成り立っています。大型犬は、ラブラドール・レトリーバーから、小型犬はウェスティに、キャバリア・キング・チャールズスパニエルまで。地元でコリーと呼ばれるボーダーコリー、そしてラーチャーと呼ばれる視覚ハウンドのミックス犬(猟犬として作られた)も、お馴染みの面々。ただしボーダーコリーのような膨大な訓練と運動を必要とする犬が家庭犬としてどこでも飼われているのは、じつに驚きです。もっとも田舎では多くが家畜家の元で使役犬として活躍しています。たいていの牧畜家は牧羊犬として予め訓練されたものを買うのだそう!したがってプロの牧羊犬訓練士というのも存在します。それだけ文化に根ざしているわけですから、ボーダーコリー達が活躍する牧羊犬競技会は、テレビでも放映される大々的なイベントでもあります。
夏から秋にかけてイギリス中で行われているカントリーフェアに出かければ、会場は家族連れと共にそのペットの犬でウサウサしています。そしてその主役は、ほとんどスパニエル系、レトリーバーといったガンドッグ系の犬種。なんとなく昔からいたから、という理由で飼っている人もいるようですが、実猟犬として飼っている狩猟家が多いのも興味深い点。カントリーフェアはイギリスの人気犬事情を垣間見ることができるので、私はイギリスに行くときにはよく訪れます。
根強いテリア人気
都市部でも、田舎でも関係なく、どこでも見られるのが、テリアたちです。少なくともFCI(世界畜犬連盟)公認のテリア種の90%以上はイギリス原産ではありますが、ただし一般市民のテリア事情はというと、誰もがスティールブルーの毛をキラキラさせたヨーキーや、純白のウェスティを連れまわしているわけではありません。毛がボサボサしたもの、ツルリとしたもの、胴が長いものから、脚が短いものまでありとあらゆる「素朴な見かけ」のテリア達をそこここで見かけます。
もちろん血統犬種とおぼしきイヌを見かけることもあるます。ボーダーテリアならどこにでもいます。ジャック・ラッセル・テリアは…というと、パブを含めやっぱりどこにでもいます。おじいちゃんといっしょに、長屋のようなレンガ造りのアパートに住んで、ソファでテレビを見ていたりもする、というのは典型的なテリアと庶民のイメージでしょう。都会ではペットとして、さらに田舎では、フェレットと共に野うさぎなどの害獣退治にもまだまだテリア達は活発に使われています。