皆さんは、愛犬の犬種の歴史を知っておりますでしょうか。今回はプードルの歴史をご紹介します。愛犬がどのような歴史をたどってきたのか覗いてみましょう。
華麗なクリップ・スタイルは狩猟犬の証
可愛い犬の代名詞になっているプードル。トリミングの犬としても代表的ですね。トリミングのスクールやお店のシンボルになってしまうほど。そればかりが目立ってしまい、中には人間のおしゃれ欲を満足させるだけのイヌ、なんて意地悪な見方も巷に存在するようです。しかし本当はそれだけじゃないところがプードルという犬種のふか~い深いところなのです。プードルの中身は見かけと同じぐらい華々しく、そして見かけからは想像ができないぐらいクールなのです。
何故?
かつてプードルは猟犬、それも「水もしたたるイイ水猟犬(?)」だったから。
そして今でもその気質が残っているのを、プードルの飼い主さんならよくご存知のはずです。水猟に使われるイヌとは、水に入れない人間の手となり足となり、コマンドに従って水中で細々とお手伝をするハンターの助っ人。人と密接に絆を保つ欲、強い学習欲がなくてはこなせません。それならプードルの内面にいくらでも思い当たる節はあるでしょう。じっと人をうかがう、あの洞察的な目つきに覚えがありませんか。人とのコンタクトのよさでもあります。そして学習欲の旺盛なこと、運動神経のいいことはプードルの持つ素晴らしい素質ですが、それがかつて狩猟犬として機能していた証なのです。
機能があったクリップ・スタイル
プードル独特のあの華麗なるクリップのスタイルも、狩猟犬時代の名残です。おしゃれではなく「機能」がありました。
原産国フランスではプードルのことを「カニッシ」と呼びますがこれは「鴨のイヌ」という意味です。まさにレトリーバー(回収犬の意味)そのものです。毛があれば、浮力が増して早く泳げなくなります。機能的に働けるよう、お尻の毛をカットし、胸の毛は心臓を冷たい水から守るために残しておきました。
面白いのはプードルとよく似た歴史的背景を持つ別の犬種が、これまたよく似たトリミングスタイルを持っているということ。それがポルトガルのウォータードッグです。このイヌは漁師と一緒に海に出て、水中の魚網や落ちた魚を回収する作業を手伝っていました。1900年代初め頃の写真を見ると、このイヌのお尻の毛はカットされ、胸の毛は残されているのが分かります。現在犬種名「ポルチュギーズ・ウォータードッグ」としてショーにも出ていますが、当時の機能的に刈られたコート姿が、そのままこの犬種のクリップ・スタイルとなっているのです。
お尻の毛をかってしまう理由は、作業の他に衛生面を考えての機能もあったのではないか、というのは私の推測です。私の飼っているカーリーコーテッド・レトリーバー も毛がかなりカールしており、そして水が大好きです。天気のいい日には彼と湖に出て一緒に泳ぐのですが、何日にも渡ってそれを行っていると、巻き毛が密なお尻の毛が乾ききれないことがあります。そのうち湿気た環境が大好きなバクテリアが繁殖し毛の油脂とまじり、その部分の毛がひどく臭くなるのですね。ドライヤーのない時代であれば、尚更。そんなことも避けるためにおそらく水猟犬プードルのお尻の毛は刈られていたのではないかと思います。
巻き毛の狩猟犬種が証人
プードルと外見的にそっくりな犬種が現在狩猟犬として働いているという事実も、プードルが狩猟犬だったという証拠として見逃せません。アイルランドには巻き毛の水猟犬「アイリッシュ・ウォータードッグ」というのがいます。現在もアイルランドで水猟犬として活躍しています。このイヌの起源は、ヨーロッパの大陸の国々ではないかと考えられています。となれば、プードルのようなウォータードッグが祖先として考えられる可能性は強いのです。
いかがですか。皆さんも少しプードルを見る目が変わってきたのではないでしょうか。様々な犬種がこの世にいますが、その歴史を顧みた時、プードルほど犬種学的にエキサイティングなイヌはいないと思います。
プードルの大きさは4種類
日本の血統犬種は主にジャパンケネルクラブ(JKC)よって個体の戸籍管理が行われています。JKCというのは世界畜犬連盟 (FCI) という団体の参加に入っています。つまり日本ではFCIが公認している犬種のスタンダードを採用していることになります。FCIではプードルの大きさを4種にわけて登録をしています。
トイプードル:24 cm から 28 cmまで
ミニチュア・プードル:28 cm から35 cmまで
ミディアム・プードル: 35 cm から45 cmまで
スタンダード・プードル :45 cm から 60 cmまで
です。トイプードルよりもさらに小型の「ティーカップ・プードル」という犬も登場しているようですが、これはFCIには公認されているサイズではありません。トイプードルですでに本犬種はかなり小型化されているわけですから、それ以上サイズを抑え込んでしまうというのは、生物的な限界でもあり無理が生じます。その点、犬はやはり生き物であり、モノではないのですね。なので、健全性はなくそんな犬種を作り出すということ自体繁殖衛生の倫理に触れることでもあります。
過去に狩猟に使われていたプードルはおそらくミディアムからスタンダード・プードルです。トイプードルやミニチュア・プードルに関しては、愛玩犬として飼われていた小型プードル、あるいはミディアム・プードルに小型犬種をかけあわせたものと考えられています。