皆さんは、愛犬の犬種の歴史を知っておりますでしょうか。今回はパピヨンの歴史をご紹介します。愛犬がどのような歴史をたどってきたのか覗いてみましょう。
その昔…
パピヨンはヨーロッパでかつてトイスパニエルと呼ばれていた小型愛玩犬の子孫にあたります。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルもかつて「トイスパニエル」と呼ばれていたので、パピヨンはイギリスのスパニエル生まれの犬種ではないかと考える人もいるのですが、然に非ず。その歴史を遡ると、たどり着くのはイタリアやフランス、ベルギーといった大陸側のヨーロッパ諸国です。
その証拠はルネサンス時代のイタリアの絵画に多く残されています。イタリア、ヴェネチアで活躍していたルネサンス時代の画家パオロ・ヴェロネーゼ(1528-1588) の絵画に、白地に赤い班を持つトイスパニエルがよく登場しています。イタリア貴族の間で一般的な愛玩犬であったことを物語っていますね。ヴェロネーゼと同じぐらいに登場したルネサンス画家のティツィアーノ・ヴェッチェリオ(1490-1576)も好んで白地に赤い斑点のトイスパニエルを描きました。ヴェロネーゼの描く犬は、頭部が丸くややチワワににた感じのトイスパニエルでしたが、ティツィアーノの犬は、マズルのあたりもほっそりと全体的に洗練された感じのタイプ。そして、トイスパニエルをヨーロッパで本当に有名にしたのは、ティツィアーノの絵画だそうです。
ベルギーとフランスの犬として
パピヨンとキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルはこれら貴族の間でもてはやされたトイスパニエルを共通の祖先として持っています。イギリスに渡ったトイスパニエルは独自の発展を遂げ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルという犬種になりました。だいぶイギリスでモデルチェンジを受け最初のトイスパニエルより短頭になっています。パピヨンの場合イタリアにいた頃とあまり姿を変えていません。ほぼ昔のトイスパニエルのまま犬種となったと考えるといいでしょう。
パピヨンの公式原産国はベルギーとフランスです。ドッグショーが台頭し犬種ごとにブリーディングするという意識が高まった19世紀において、トイスパニエルがもっとも多く残されていたのがおそらくフランスやベルギーではなかったのかと思われます。フランスとベルギーは互いに隣接している国なので、似たような人気小型犬トレンドをもっていたのでしょう。
突如現れた立ち耳のトイスパニエル!
これまで紹介した古い絵画に登場するトイスパニエルはいずれも垂れ耳の犬です。 実はパピヨンのような立ち耳のトイスパニエルは突如現れたようで、1800年代の終わりぐらいから立ち耳のトイスパニエルが人気になり始めました。立ち耳トイスパニエルがなぜ現れたのか、についてはポメラニアンを交配したのではないかという「噂」もありますが依然謎のままです。
立ち耳のトイスパニエルが登場した以上、トイスパニエルなどと十把一絡げのあいまいな名でよばず、きちんとした犬種名が与えられることになりました。FCI(国際畜犬連盟)は1934年、この立ち耳トイスパニエルを一つの犬種として認めました。このときに初めて「パピヨン」という名が公式に登場しました。正式名称は「コンチネンタル・トイスパニエル、パピヨン (Epagneul nain continental, Papillon)」です。パピヨンはフランス語で「蝶々」を意味します。そう、耳が蝶々の羽のように見えることに由来します。
一方で元祖トイスパニエルである垂れ耳の犬はしばらくの間「トイスパニエル」と言う名で通っていたようですが1955年、「コンチネンタル・トイスパニエル、ファレーン (Epagneul nain continental, Phalene)」と新しい名前が与えられました。ファレーンというのは蛾を意味します。というわけで犬種自体にはルネッサンスの頃からの歴史があるものの、名前に関しては新しいものなのですね。
■グループ9 愛玩犬(コンパニオンドッグ&トイ・ドッグ)