皆さんは、愛犬の犬種の歴史を知っておりますでしょうか。今回はヨークシャー・テリアの歴史をご紹介します。愛犬がどのような歴史をたどってきたのか覗いてみましょう。
ヨークシャーの田舎で
ヨークシャーを旅したことがあります。イギリス北部に位置する英国田舎情緒に溢れるとてもきれいなところです。起伏の緩やかな丘が連なり、牧草地を隔てる石の壁が地平線めがけて縦横する…、そんなシーンを背景に、偶然にも女の子に連れられたヨーキーが向こうから歩いてきました。
ヨーキーの金色のマスクからのぞく笑い顔のような可愛らしさが、ヨークシャーの風景とブレンドして、ここでは「いたずらっ子っぽさ」にも見えました。
「ヨーキーってそうだ、テリアだったんだ!」
と犬種の歴史を思い出させられた一瞬です。
不思議なものです。ショーリングでは長いコートに身を包み赤い箱の上に立つ、貴族の愛玩犬。でもペットクリップにすれば庶民の家庭犬。ヨーキーとは2つの顔をもつ犬でもあります。
出会ったその子はコートはもちろんペットカット。耳がピョコンと突き出ています。いかにもヨークシャーの田舎で、ねずみでも捕まえそうな犬に見えました。こうして改め眺めてみると、逆にこの歴史的なねずみ捕り犬から、よくぞイギリス人はショードッグとしての素質を見出しこんな風に改良したものだと、感心せずにはいられません。
シルキーコートの貢献者
ヨークシャーテリアの前身はワイヤードヘアーをまとったいかにもテリア然とした犬でした。最初から、こんなに美しくて優雅ではなかったのですね。しかしどう他の犬をかけあわせ、ヨークシャーテリアのエレガントさの象徴でもあるシルキーコートを表現させたのか、これが実はあまりはっきりしていません。
産業革命の頃、羊毛業で栄えたヨークシャーにはスコットランドからたくさんの出稼ぎ人がやってきました。そのときに連れられてきたネズミ捕り犬やもともとヨークシャーにいたテリアが元になって超小型テリアのヨークシャーテリアが作られた、ということです。あのシルキーコートに貢献したのは、スコットランド人が連れてきたテリア、クライスデール・テリアともいわれています。現在は絶滅した犬種です。多くの文献には、ヨークシャーテリアの作成に関わった犬はこのほか、オールド・ブラック&タン・テリア、ダンディ・ディンモント・テリア、マンチェスターテリア、そしてマルチーズと記されているものです。
イギリスには地名にちなんだテリアがいっぱい!
イギリスに住んでいなくとも、ヨークシャーというのは多くの人にとって馴染みがある地名でしょう。なぜこの地名が私たち日本人にとってそんなに聞き慣れた名前なのか、というとそれは、まさにヨークシャー・テリアのおかげではないかと思うのです。なんと言ってもヨークシャー・テリアは昔から日本でとても人気のあった犬種です。犬に興味がなくとも、誰もがいつかはどこかで聞いたことがある犬種名なのでは?
さて、ヨークシャーテリアに限らず、実はテリアの世界にはイギリスの地名にちなんだ犬種がたくさんいます。身近なところで、スコッティッシュ・テリア。これはスコットランドのテリア、という意味。ウェスト・ハイランド・ホアワイト・テリアもしかり、スコットランドの西側にあるハイランド(高地)のテリア。ノーフォークテリアにノーウィッチテリアはイギリス東部イースト・アングリア地方。そこにノーフォーク州というのがあり、ノーリッチというのは州都。この一帯からきたテリアです。
テリア犬種の名前を覚えると、イギリスの地理にも明るくなりますね!