ミックス犬にも実は血統種にまけないぐらい、いろいろな特徴があります。(ここで言うミックス犬はただしデザイナードッグを含めません)
日本にいるとピンとこないのですが、一度海外にでるとこれがはっきりわかります。たとえば、日本であれば柴ルックスのミックスが断然多いです。必ずしも血統付きの日本犬のように巻き尾とは限りませんが、立ち耳で、スピッツ系のキツネ顔をしています。いわゆるどこにでもいる「ポチ的」なルックスです。けれどこんなキツネ顔のミックスは、欧米の街角でみることってあまりないのです。欧米のミックス犬の多くは垂れ耳だし…。逆に日本犬ファンの欧米人が日本でミックスをみたら、凛々しい顔の犬がたくさんいる!と喜ぶかもしれませんね。
というわけでミックス犬にもそれなりのタイプがあるということです。そう考えると犬種的味わいすらでてきます。その国のミックスが持つ特徴こそ、その国にいる犬種の特徴だったりもします。だから外国で野良犬を見るのは、楽しみの一つですらあります。
例えば、ポルトガルの農村地帯に訪れたときは、立ち耳で、尾は長く、脚はすらりとしたクリームから赤いワイヤーコートのミックス犬をたくさん見かけました。ちょうど、それはポルトガルの国犬、ポデンゴを思い出させました。
旧ソ連のグルジアのコーカサス山脈地方を訪れた時も同じです。そこはコーカシアン・シェパードというマスティフ系牧畜番犬種の出身地でなのですが、村にはコーカシアン・シェパード風の頭部のしっかりとしたマスティフ系「ミックス」がうろうろしていました。「あっちにもこっちにもコーカシアン・シェパードがいる!」とついカメラをパチパチとやってしまったものです。野良犬の中でこれだけマスティフ風ルックスの犬が見られるだなんて大型犬ファンにとっては天国のようです。地元の人は、こんなミックス犬のどこがそんなに珍しいのかと写真を撮りまくる筆者をあきれて見ていました。一方で彼らは
「これはアメリカからやってきた血統付きのシュナウザーなんだ」
と自慢気に見せてくれましたが、こちらにすれば地元のミックス犬の方がよっぽど特徴があって面白かったです。
ただしヨーロッパでもドイツやオランダといった北ヨーロッパは野犬管理が進んでいるので、あまりその国ならではの野良犬はいません。野良犬に特徴があって面白いのはやはり南欧、東欧ですね。あまり大きな声で言えませんが、実は犬の管理が甘い国ほど特徴のある野良犬が多いのです。
と考えると、野良犬に見られるようなミックス犬と純血種の差なんて紙一重のものかもしれません。ある場所で特徴ある野良犬の個体群がとつぜん純血種として保存される、というような例があります。
いろいろな国でみた特徴あるミックス犬達
・ドイツ (ベルリン)
ドイツなど北ヨーロッパにはあまり特徴ある雑種は残されていません。ブル系の犬に人気があるために、ブル・ルックスの雑種をよく見かました。(ドイツ、ベルリンにて)
・フランス (ピレネー山脈)
フランスのピレネー山脈ではこのタイプのボサボサ犬をあちこちにいました。実はフランス・ピレネー山脈出身の血統犬種「ピレにアン・シープドッグ」というのがいるのですが、それととてもよく似ているのです。(フランス、ピレネー山脈地方にて)
・イギリス (ヨークシャー地方)
やっぱりさすがテリアの国、イギリス。ミックス犬にもテリア系のルックスが多いですね!(ヨークシャー地方にて)
・ポルトガル(リスボン郊外)
ポルトガルの海岸にはたくさんの野良犬やミックス犬が遊んでいました。その多くが、脚がすらりと長く、白地に赤い斑点の見かけをもつポデンゴ(ポルトガルの狩猟犬の一種)によく似ていました。
純血犬種ではない犬
その1 野犬とは
その2 ミックスとクロスについて
ミックス犬のおもしろさ
ミックス犬にもお国柄がある!