グループ別の歴史をご紹介。グループ6は嗅覚ハウンド。
嗅覚ハウンド犬は非常に古い猟犬のカテゴリーです。それもそのはずで、銃の発明以前にできあがった犬達です。主な役目は、獲物を追い回し最終的に仕留めること。しかしハウンド犬が「獲物を仕留める役目を担った」というのは、「起源的に」という意味で、現在のハウンド犬は全員が必ずしも獲物を直接倒すわけではありません。
グループ6の嗅覚ハウンドの特徴は、獲物のにおいを取るとすぐに鳴くことでしょう。彼らの鳴き声のニュアンスやボリュームをたよりに、ハンターは犬たちが今何をしているか、獲物からどれくらいの距離にいるかを、遠距離からでも推し量ることができます。嗅覚ハウンドを使う猟では、彼らの歌のように響く鳴き声を聞くということも楽しみのひとつとなっています。かつてイギリスのビクトリア女王が所有していたビーグルのパックの名は「歌うビーグルズ」。ビーグルの猟中の鳴き声は、日本を始め世界中のハンター達を魅了しています。
最初の嗅覚ハウンド犬というのは、視覚ハウンド(グループ10)とマスティフ(グループ2)系の犬の混ぜ合わせだったと思われます。その中で、視覚ハウンド系の細さが色濃く出ている犬はパック(集団)ハウンドとしてスピードを活かして獲物を追跡して皆で倒すことに活躍しました。アメリカン・フォックスハウンド、その祖先のイギリスのフォックスハウンドがその例です。フランスでも多くのパック・ハウンドが活躍しています。またマスティフ系が濃く出た犬は体がやや重いタイプ。ベルギーのブラッドハウンドのように、スピードを必要としないトラッキング(足跡や血痕を追う犬)に秀でた犬種になりました。
西ヨーロッパ系のハウンドのいくつかは、短足犬に改良されたものも多くいます。特にウサギ狩りの犬がそうでしょう。ビーグルやプチ・バセット・グリフォン・ヴァンデーンなど。これらの犬を使うときハンターは徒歩でついてゆきいます。ウサギはゆっくり追われれば、決して自分の住み慣れた区域を離れません。だから短足犬を使う方がウサギ猟の場合はより効果的です。またウサギが住んでいる藪だらけの地形を考えても、馬を使うより徒歩でゆっくり行く方が有利なのです。
グループ6はFCIの区分の中で種類が一番多いカテゴリーで、実は全体の2割強を占めています。そのわりには、世間一般でもっとも馴染みの薄い犬種群でもあります。理由は、多くの犬たちはまだ純粋な猟犬として働いていて、愛玩犬として飼われることはほとんどないからです。ショードッグとして人気のバセットハウンドやビーグルとて、ヨーロッパでは猟犬として働いている系統はまだたくさんいます。
しかし例外もあります。それがダルメシアンです。原産国は、クロアチア。ダルメシアン海岸というのがあり、かつてここで使われていたハウンド犬と考えられていますが、この信憑性はあまり定かではありいません。現在猟犬として使う人はまったくおらず、完全に愛玩犬種となっています。
今のような犬種として確立されたのは、クロアチアではなくイギリスにおいて。18世紀のジョージア時代から19世紀のビクトリア時代、馬車や馬で遠出をする上流階級の人々のボディ・ガードとして活躍しました。ダルメシアンを使うということには装飾効果もありましたが、その素質として大事なのはハウンドならではのスタミナと馬についてゆきたいという情熱でしょう。