グループ別の歴史をご紹介。レトリーバー種およびスパニエル種、ウォータードッグ達。
一羽、又一羽と鳥が林の向こうに撃ち落とされました。。1,2,3...ラブラドール・レトリーバー、トリクシーの集中力は強烈です。その間クーンなどととも言わず静かに彼女の目は鳥の落ちる行方に完全に釘付けです。辛抱強くハンドラーのシャスティンさんの左横に座り、今か今かとコマンドが出されるのを待っていました。
シャスティンさんが軽く手で「探せ」の合図をだすと、脱兎のごとく。何の迷いもなく薮の中に突進し、間もなく口に鳥をくわえてこちらへやって来ました。シャスティンさんのところに来ると彼女の前で一旦座り、頭を高く上げ獲物を差し出しました。そっと鳥を受け取る。とトリクシーは一度横に付き、彼女の合図で又、薮の向こうへ走りぬけ、次々と鳥を回収してきました。全部で4羽。
さすがの技です。完全にコントロールされた動き、レトリーブへの情熱、スピード、そして何よりもトリクシーは鳥の落ちた場所を全て覚えていました。
世界の家庭犬の中で一番人気のある犬は、シェパードなど牧羊犬種、そしてグループ8のレトリーバー種です。家庭犬としてだけではなく、これほど世の役立っている犬たちもいないでしょう。鳥の落ちた場所を覚えておく時に使われていた集中力、鳥を探すサーチ力、他の犬とも喧嘩せずに一緒に作業ができるおだやかさ、そして物品欲等、回収犬になくてはならない素質ですが、実はこの素質が、猟場を離れたレトリーバー達の都会での活躍ぶりに貢献しています。災害救助、麻薬探知、サービス及びセラピードッグとして働くラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーを知る人は多いのではないのでしょうか。
牧羊犬種とレトリーバー種は、機能性の意味ではよく似ています。ハンドラーの出す合図を理解し、人間との密なコンタクトによって仕事をします。もしかして牧羊犬とレトリーバー種はどこかで繋がっているかもしれません。レトリーバー種は、ウォータードッグから進化した犬種群です。その原始版が、アイリッシュ・ウォータースパニエルや、カーリーコッテッドレトリーバーといった巻き毛の犬たち。彼らは昔から水場を仕事としてきました。一方、巻き毛のウォータードッグたちは、牧羊犬由来であることも知られています。となると、牧羊犬⇒ウォータードッグ⇒レトリーバー種という系統図も成り立つのでは?!あくまでも個人的な仮説でありますが…。
セターのような広大な土地で獲物を探すガンドッグが存在する一方で、猟の種類、猟野によっては、ハンターとのコンタクトをまめに取り、働く猟犬もいます。スパニエル種がこの部類にあたります。セター種とレトリーバー種のちょうど中間タイプの猟犬ともいえるでしょう。その機能の多様性のため、原産国イギリスではもっとも人気のあるガンドッグです。
活躍舞台は、キジやウズラの人口が密である農作地、たいていはてんさい畑が一般的です。持つべき大事な猟性能は、散弾銃の届く範囲でハンターと仕事をすること。見つけたらすぐに羽ばたかせる。よってスパニエルはハンターのすぐ側で捜索の仕事を行います。
撃たれた獲物がどこに落ちたかマーキングをし、記憶に留め、コマンドが出されたところで回収をします。この点では、レトリーバーに求められている猟芸と同じ。そしてスパニエル種も人との協調性のよさから、やはり現在世界でもっとも人気のある家庭犬種のひとつとなっています。