フランスケネルクラブによる犬種別新規登録統計トップ10はヨーロッパでもなかなかユニークなラインナップで成り立っています。そもそも、このトップ10犬種のうち日本で普通に知られている犬といえばゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ビーグル、ジャーマン・シェパード・ドッグのみ。あとは、聞いたことはあるかもしれないけど実際にみることはない、中には聞いたことがないような犬種もいます。
2020年の比較として20年前のトップ10、つまり2000年の統計もこちらごらんください。2000年では、ただし、トップ10ランキングは他のヨーロッパのそれとそれほど変わらないものでした(マリノア、ボーセロンが入っているという点を除いて)。しかし20年後には大きく様変わり!絶大的な人気ナンバーワンを誇っていたジャーマン・シェパードは、今や5位に。代わりにオーストラリアン・シェパードがトップ。3年連続のナンバーワンです。登録数はおよそ17000頭。15000頭の登録数を超えた犬種というのは1996年のナンバーワンであったジャーマン・シェパード・ドッグの登録頭数記録以来だということです。オーストラリアン・シェパードは実はいくつかの欧米諸国でジワジワと注目を集めている犬種なのですが、これほど絶大なる人気を勝ち得ているのはやはりフランスのみ。
オーストラリアン・シェパードは、ただし誰もが飼える犬種ではありません。日に30分のお散歩であとはお家というようなライフスタイルはこの犬種には合いません。ましてや1日の大半がお留守番の生活だなんてもってのほか。オーストラリアン・シェパードは歴史的には牧羊犬種です。それゆえに身体のみならず頭を常に忙しくさせているのが好き。飼い主はアクティブで日に少なくとも1時間の散歩を与えられる人でなくてはなりません。また、犬の初心者にも向いていません。暇を持てあませば何か代替となるアクティビティを自分で考え出します。その行為が必ずしも人や社会にとって嬉しいものとは限りません。破壊行為に及んだり、通りの車やサイクリストに対して吠えたり追いかけたりする、という問題行動(人にとって、ですね。犬は問題行動だと思っていません。暇すぎて、他にやることがなかったのにすぎないのです)に発展しやすくなります。
したがっていくらフランスで人気ナンバーワンの犬種だからといって安易に「飼いたい!」などと思わないように!オーストラリアン・シェパードは突如人気犬にはなりましたが、牧羊犬タイプの犬をどう飼うべきかというノウハウはすでにフランスの犬文化の中に根付いていると思うのです。さもなければ、これほど人気にはならないはずです。
というのもフランスはかつてジャーマン・シェパード・ドッグが大人気であったことからもわかるように、牧羊犬タイプの犬を好む国民です(ジャーマン・シェパード・ドッグも元は牧羊犬です)。マリノアが3位についているという国もなかなか珍しいと思います。マリノアは、ベルジアン・シェパードと呼ばれているベルギー出身の牧羊犬種の一種。すでに2000年においてもトップ10内にいることからも、根強い人気を誇っている犬種です。こちらも、ジャーマン・シェパードとよく似た気質で、初心者向きどころか、どちらかというと玄人向きの犬。特にフランスやベルギーでは警察犬といえば、ジャーマンシェパードよりもマリノアが使われています。2000年のデータを見ると、9位にボーセロンが入っているのもかなり驚きです。この犬種も元牧羊犬(あるいは牧畜犬)。フランス以外の国では、ヨーロッパでもかなり珍しい犬種です。もちろんフランス原産犬種。
フランスもドイツと同様に純血犬種といえば、大型犬好みであるということがわかりますね。トップ10内に超小型犬種がまったく見当たらず、強いて言えば8位のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルでしょうか。
▼フランス2020年順位トップ10
1位:オーストラリアン・シェパード
2位:スタフォードシャー・ブルテリア
3位:マリノア
4位:ゴールデン・レトリーバー
5位:ジャーマン・シェパード・ドッグ
6位:アメリカン・スタフォードシャー・テリア
7位:ラブラドール・レトリーバー
8位:キャバリア・キングチャールズ・スパニエル
9位:ビーグル
10位:イングリッシュ・セター
▼フランス2000年順位トップ10
1位:オーストラリアン・シェパード
2位:ラブラドール・レトリーバー
3位:ロットワイラー
4位:ゴールデン・レトリーバー
5位:イングリッシュ・セター
6位:ダックスフンド
7位:キャバリア・キングチャールズ・スパニエル
8位:イングリッシュ・コッカー・スパニエル
9位:ボーセロン
10位:マリノア