皆さんは、愛犬の犬種の歴史を知っておりますでしょうか。今回はコッカーの歴史をご紹介します。愛犬がどのような歴史をたどってきたのか覗いてみましょう。
コッカーとスパニエル種の歴史について
・文:藤田りか子
スパニエルと名のつくブリードはたくさんいる。スプリンガースパニエル、コッカー、キングチャールズ,etc…。公認種だけでも10種以上はいるだろう。全員が長耳、毛長、そして一応にあの典型的な可愛らしいスパニエル顔をしている。犬種に慣れてなければ、名前と外見を一致させるのが難しいかもしれない。
それにしても、何故こんなにたくさんのスパニエルが?
・フランス人がスペイン産と言ったから…
スパニエルというのはフランス語で「スペインの(Epagneul)」という意味。けれど、不思議なことに現在スペインにはスパニエルルックスを持つ犬種が原産犬として見当たらない。言うなれば、日本人が小麦粉を当初アメリカからきたものとして「メリケン粉(アメリカンから訛って)」と呼び始めたようなものかもしれない(その国が原産でもないのに関わらず)。このイヌ達についても、たまたまスペインから最初に入ってきたという理由で、フランス人がそう名づけたのではないだろうか。
現在のスパニエルを最終的に形作ったのはイギリスに他ならない。イギリスへ渡ったフランス人が自分達が連れてきた狩猟犬を「スペイン犬」と呼ぶものだから、イギリス人も前へならえでそう呼ぶようになった。およそ13世紀頃の話だ。
・スパニエルというイヌとは
スパニエルは次第にある特定のタイプのイヌ、ヤマシギや小動物を狩るときにハンターを助ける猟犬の総称となる。喩えると、フランス人の持ってきた「スパニエル」というごった煮の中から、イギリス人が具を一つづつ抽出して、現在のバラエティ豊かなスパニエル種を作ったと考えればいいだろう。ウォータースパニエル(水猟犬)と区別するために、陸で活躍する狩猟犬として「コッカー」(ヤマシギ)や「フィールド」なんて言葉を名前にかぶせるようになった。貴族の近くでヒラヒラしていた割合小柄なコはさらに改良を受け、「チャールズ王のスパニエル(すなわちキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル)」として抱き犬愛玩犬として後に登場する。
・様々に枝分かれしたスパニエル達
猟犬として活躍していた中世期、コッカー、スプリンガー、フィールドスパニエルあたりは区別が曖昧でほとんど同じイヌだったようだ 。その境目を作ったのが19世紀末ドッグショーが盛んになり犬種という概念がはっきりしてきた頃。
ショーの入り口に入ると、体重計があって
「あなたのスパニエルは11.5kg以下ですからコッカーとしてエントリーしてね」
という具合で分けられたそうだ。それより重ければフィールドスパニエルとして当日ショーで審査を受けた。だから兄弟犬たちが、その日を境にあるコはフィールドに、別のコはコッカーになったという不思議な事態も発生した。さらにフィールドスパニエルの中から背の高いコがスプリンガーとして区分されたということだ。
コッカースパニエルはその後ショーの発達と共に、かわいらしい見かけに磨きがかかり現在ある姿となる。アメリカに渡ったコッカーはアメリカナイズされ、ちょっと派手目になって「アメリカン・コッカー」という新種になった。
・コッカーの愛すべき性格はスパニエルのもの
スパニエル種のあの豊富さは以上のような経緯で誕生した。中でもコッカーなどが、人気の犬種であるというのは、可愛らしいスパニエル・ルックスと共に、彼らのスパニエルらしい気質が歴史を通して未だに受け継がれているからだ。フランス人の持ってきた「スペイン犬」は前向きで、明るく、柔軟な性格ゆえ、ハンターのよき友達となった。同じ理由で、彼らは現在家庭犬としてパーフェクトにマッチ。ロングランを誇る世界の愛玩犬となっていったのである。
グループ8:レトリーバー・スパニエル・ウォータードッグ