ペット業界で活躍するスペシャリストにフリーステッチスタッフがインタビュー!シリーズ 第10弾
"Healthy Dog Ownership"を運営する動物行動学者の田中 雅織さんへ、フリーステッチスタッフの山本さんにインタビューしていただきました。
Q1 自分自身を犬で例えるとなんの犬種でどんな性格だと思いますか?
A1 なるほどね。たぶん僕は雑種であって、野良犬ですね。間違いなくそうです。組織に属さないんですよ。一匹ですね、ずっとね。
[スタッフ]何と何の野良犬ですか?
完全な雑種ですね。純血種の匂いが全くない感じです。よく保護犬とかにいる、中型犬の茶色い感じのいかにも標準的な雑種です。
[スタッフ]性格的なところだと?
着の身着のままですから野良犬ですね。好きなことしかやらない。嫌なことはやらないし、無理はしない。
Q2 ドッグビヘイビアリストとはどのような方のことを言うのでしょうか?
A2 ビヘイビアリストというのが、名詞なんですね。「行動主義者」っていう日本語にするとなっているんですけど、行動主義という心理学のある哲学があるんですね、その主義にならって実践している人のことをビヘイビアリストと言います。科学的なバックグラウンドがあって。それは行動主義、哲学の名前で、それを科学にすると「行動分析学」という行動の科学になるんですね。学者研究者、行動分析学の研究者のことを、ビヘイビアアナリスト「行動分析家」。実践して行動変容とかガンガンやっていく人をビヘイビアリストというんですね。
[スタッフ]実際にワンちゃんを扱って、問題行動の改善をする人のことを?
そうですね、実践者のことになります。厳密にいうと、行動主義っていろんなのがあるんですけど、僕なんかの場合は徹底的行動主義っていう本家、本元みたいな考え方で割と人生自体も行動主義で考えていくし、行動しているでしょ?生きていると行動するんですよ。死ぬとできないんですよ。
だから、生き方としての行動主義っていう風に落とし込んでいくっていうのがビヘイビアリストじゃないかなというふうに思います。それの犬バージョン!
Q3 動物行動学と行動分析学を取り入れたトレーニングは犬種に関わらず同じ考えで教えられるのですか?
A3 基本的に行動主義がもっている行動の理論っていうのがいわゆるドッグトレーニングの世界で使われる言葉ですけど、古典的条件づけとか、オペラント条件づけとか、表現まちがっているんですけどねそれすらね。それが専門なんですね。そのうちのオペラント条件付けの学問ていうのが行動分析学と言えるんですけど。その、犬種とかっていうよりは脊椎動物に共通した理論を扱うんですよ。なので犬種とかって大した差じゃ無い。
[スタッフ]チワワちゃんとか大型犬とかも同じってことですか?
犬種による特性っていうのがあるんですよ。そこ伸ばしてきてるから。遺伝的資質として人間が改良しているっていうのがあるから、その違いっていうのが出てくるけど。よく言われるのがうちの子にはこういうやり方があってるとかそういう話じゃないです。細胞が分裂したりとかウイルスが入って免疫が反応したり、それの学習の話をしているので。ウイルスの免疫の反応意思でコントロールできないし、関係ないですよね?勝手にやってますよね?細胞分裂も勝手にしてるんですね。それと同じように勝手に学習も進んで行くんですよ。この性質のことを言っているので、その学習の理論が通用しなかったら絶滅してるはず。環境に適用できないから死んでいるんですよ。この時点で生きてる。ここもそうなんですよ。私もそうですし、山本さんもそうだし。ここにいる犬たちもそうで、古代からずーっと生き残ってきた証なんですね。これは環境適応能力があるから生き残っているという証拠があって、この性質の話を行動の理論にしているんですよ。だからうちの子に合う、合わないは関係無いし、チワワはだからとかそんなの大した差じゃないですよ。もちろん犬種による差っていうのはちゃんと見ていかなきゃいけない。それは犬種の差っていうよりは個体の差のほうが大きいです。同じチワワはでも全然違うし、グレートデンでも全然違うし、犬種で区切っちゃうと。それだと逆にいえば犬種で性格が変わるみたいな考えかたあるじゃないですか。それ人種って言葉に置き換えたらやばくない?やばいですよね。
アメリカ人はこの性格でアフリカ人はこの性格だって言ったら、「お前だいぶステレオタイプだぞ。」言われますよね。それと同じことが犬だとわかりとっちゃてるってことがあって、本質を多分知らないんだろうなっていうことですね。それをお伝えするのが仕事ですよね。僕らの。
[スタッフ]やっぱり驚かれる方も多いですか?
犬種関係ないよ。年齢関係無いよていうから。「えっ!」ってなってる。年齢も関係無いですからね。
[スタッフ]年齢も関係無いんですか!?
年齢関係無いですよ。これ本当に一年中言っているんですけど、今脳科学の先生たちがそのカンファレンスとかみたり、論文とかみたりしていると、一生懸命火消しに走っているんですね。なんの火消しかっていうと、年取ると学習できないのがデマなんですね。むしろ逆で。生きている以上学習が進んじゃうから止めることできないですよ。学習ってそういう性質です。だから行動分析学で臨床科、人間のビヘイビアリストの人たち。公認心理師とか、臨床心理士になっていますけど。対応しているのが認知症やアルツハイマーの方の行動変容なんですよ。関係無いんですよ。それすらも。脊椎動物で生きていれば通用するはず。
[スタッフ]シニアになるともう穏やかに過ごすようにと思っていたんですけど。むしろいろいろお勉強を続けた方が
生きるっていうことはどういうことかって考えていくと。行動するとも言えるんですよ。行動してないっていうのは、死んでいる人は行動できないから。行動が完全にできなくなった状態ってほぼ「死」なんですよ。っていうことは生きてて体が元気に動くなら、少しでも動けるならどんどん動かしってった方が良い。もちろん無理は禁物です。その子のペースによって、ウチなんか16歳半の犬がいるんですけど、まだ歩いてますよ。中型犬で、目の曇りも無く。もちろん食事や生活習慣ずっと気をつけてやっていますね。行動のレパートリーを増やすみたいなこともずっと努力してきています。なので適応力も高いんですよね。未だに16歳半で朝晩歩いていて、きつくなるとそのまま立ち止まって寝ちゃたりするわけで、そしたらバギーに乗せて帰る。だけど極力本人が動くっていっている場合は動かす。歳だから腫れ物に触って動かさないとどんどん代謝が悪くなり細胞分裂も遅くなり、つまり老廃物が溜まって壊れていく体が。少しでも良いから動かした方が良い。エネルギーが必要だから食べるし、分解されて吸収されて排出されて生の営みが動くようになるけど。動かなくしたら弱っていってちゃうから。でも無理はしない。でも塩梅難しいですよね。でもそこでなるべく動かしていく。なのでよく理学療法みたいなのでリハビリで我々手伝うのが、バランスボールに乗せるの教えたりとか、ああいうのも無理やりやったら嫌がるから、本人が好きでやるように行動を作っていくようっていう風にやると、もっとやってよ!もっとやってよ!と自分で乗るようになるから。そしたらいい運動になる。
[スタッフ]気持ちも嫌じゃ無いですもんね。その子自身も。
だから獣医師さんの先生とやるときとかも、ほんと老犬とかで歩けなくなってて、それがこうリハビリやってバランスボールをやったりとかして、ポジティブな行動を引き出して行く。感情を含めてやっていくと、自分で排泄できるようになるんですよ。嬉しいですよね、飼い主さんも!今ままで抱っこして哀れな姿で排泄させてたのが、自分の意思でグッと立ち上がって時間をかかっておトイレまで自分でいけるように戻って行く。泣いちゃいますよね。そういうので仕事ができた時にすごく充実感ありますよね。そういう仕事になっているかな。まあ問題行動変容が多いんで、だいたい吠える、噛む、不安。怯える、逃げる。いわゆる不安障害とか恐怖症みたいなのがほとんどですけど。そういう子たちがドッグランでよろしくやっているのみるとまた、よかったなと思います。そんな仕事ですかね。
Q4 ワンちゃんのしつけやトレーニングを行う際に大切にされていることは?
A4 犬ファースト。常に犬ファースト。犬もハッピーになれば人もハッピーになる。そう信じてやる。人間の都合とかおかまいなし。
[スタッフ]でも結構オーナーさんってこういう生活リズムだからこうしたいとか、
おだまり。その生活リズムだからそうなっているんだよ。あなたが変わらない限り犬も変わりません。というのを理論的にはっきり言っています。
[スタッフ]結構納得されて変えられていく?
でなきゃ無理ですよ。飼い主さんの行動を変えるのが仕事ですから。そこにいて、そうなっているんですから。そこの状態がまずいんだって認めてくれって言っているわけです。それを変えていきましょうってことですね。だから結構皆さんご苦労されてますが、せっぱつ詰まってる人が多いんですよ。5人トレーナーかかっていてうまくいってないとか、だから100万ぐらい使っちゃてるとか。だから追い込まれているから、みんな真剣にやりますよね。
[スタッフ]やっぱりワンちゃんを変えるために、トレーナーさんに頼られる方が多いんかなって思うんですけど、やっぱりそうなんですか?
まず自分のこと見なさいって。なぜかというと行動っていうのは環境が原因になるので、環境としては個体の外でしょ。一番やってるってなったら飼い主ですよね。個体の外の中で一番遭遇率が高くて、時間が長くて、なんかの行動でずっと関わっているのはだいたい飼い主です。そうなってくると、飼い主の行動が犬の行動を作っている。
[スタッフ]悪気があってやっているわけじゃないとかありますもんね。
知識がないとか、知らないとかそれだけですよ。そういうところを色々と、日本全国走り回ってやっているところです。皆さん鼓舞しながら、
Q5 しつけやトレーニングに悩んでいる方へ、今後悩みを抱えたままにならないようどのように進んでいけば良いのかアドバイスをお願いします
A5 諦めないことですね。変わんない行動なんてないですから。そもそも吠えてなかったはずなのに吠えたってなってるってことは変わってるじゃないですか。吠えるようになったわけだから。変わるってことは事実、皆さんみているはずなんですよ。噛まなかった犬が噛むようになった。吠えなかった犬が吠えるようになった。ってことはこれは行動が変わってるってことの事実であって。たまたま都合の悪い方にいっただけです。システム上同じことが起こってるから、環境を変えてあげる。その行動の学習の理屈を理解して、そこセットしてあげれば、変われるんですよ。逆に言えば、それをセットしたら変わらないはずがない。我々の性質上変わらざるおえなくなる。そうなってきた時に、そういう視点で見てみれば、変わんない行動は無い。うまくいかないのはやりかたがうまく無いだけ。手続きがあってない。
例えば肉じゃが作るとするじゃないですか、そうすると玉ねぎとジャガイモとお肉とお醤油と砂糖とみりんお酒と。調理の順番が決まっているはずですよね?それを全部ぐちゃぐちゃにすると違うものができます。それと同じことが起こる。これ理系実験心理学から来ているから手続きがミリ秒単位で決まっているんですね。それをなるべくわかりやすく伝えていく。何をどうしたら行動が増えて、減っていくか。その因果関係が出尽くしているところはありますね。どうすればこうなるっていうのは大体わかっているので、臨床で使えるわけですね。臨床の行動変容が専門になりますから我々は。そういう臨床の分野で使えるってことは健常だったら全然楽勝です。だから変わらない行動は無い。諦めちゃいけない。嫌なこともなかったら、良いこともないじゃ無いですか。嫌なことがあるから、些細なことでも嬉しく感じれる。やなことは絶対必要で、それでなり当たっているわけです。そういうふうに考えてみると、ずっと遺伝の歴史で生き残って来た存在。負けなかったんです環境に。山本さんも私もここにいる犬たちも飼い主さんも。それだけで超立派じゃ無いですかって言えるんですよ。それだけでいいんですよ。もう「丸儲け」とさんまさんもいうけどね。
あれは本当に深い言葉。その通り。だって古代からずっと繋がっているんですよ。この瞬間まで。今ここでお会いしているんです。こんな素敵なことはないですよね。くよくよ悩んでもしょうがない。生きてるだけで丸儲け。犬が吠えている。大丈夫。生きてる証拠って言えるわけです。そうしたらもうちょっとドンと構えて、余裕を持って対応できる。だから、飼い主さんも悩むかもしれないけど、悩めるのも生きている証拠。犬も生きているからこそ悩むことができるんです。その子が死んだら悩むことすらできない。って考えればもうちょっと前向きになれるんじゃないかな。そういう意味では飼い主さんに諦めずに
[スタッフ]今悩んでいる方はチャンスがいま
そうですね、僕の方に問い合わせていただければ、お近くに弟子がいれば飛ばしますので。速攻すぐに介入してもらって一ヶ月か二ヶ月くらいでパッと直す。犬の行動のことで半年も一年も悩むのは。例外はあるよ、あんまり酷いのは。体罰バンバンやってたりするのは、そうなってしまうから。治らなくなるけど、治るけど時間がかかる。そうでなければ、今日ここに来ている飼い主さん、訓練全然ない人多かったので、そういうことであれば二、三ヶ月あれば治るはず。五、六回、トレーニングして五、六回。二週間に一回。やって、うまくトレーナーの指示通りやっていれば必ず治るはずです。どこか病気が絡んでいれば気がつきますから。見ていれば。これは神経系の病気が来ているから病院行きましょう。わかりますから。
[スタッフ]ただの問題行動だと思っているかもしれないけど、本当は病気なんてことも?
それもありますよ。痛みからくる攻撃性とかもあるので。僕らがやっているのは躾ではないです、行動療法なので。治療ですね。それは 結構飼い主さんにもきつく言います。躾じゃないからねって。真面目にやってくださいよって。トレーニングとか躾だっていうとサボるでしょって。忙しかったとか。朝お弁当作らなきゃとか動物病院予約するときは仕事休んでもいくじゃないですか。それと一緒だよ。ということ。ちゃんと真面目に考えてやって、犬の行動のことも。よりにこやかに、ヘラヘラして過ごせるようにしてあげたほうがいいですよね。リラックスして。楽しく生きていってほしいなって、そもそも犬の方から頼まれて飼っていないですよね。やっていることは拉致ですから。親から拉致ってきてやってるんですから、絶対幸せにしなければいけないんです。我々が。そのための脳みそだし、そのための科学だし、犬を通じて、我々現場でこういう科学もあるんだよ。便利に楽しく使えるよっていうのも伝えていくことで、そのお子さんとかが大学をめざしてもらったりしたらいいなと思います。そんなことを考えながらやっています。